大判例

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仙台高等裁判所秋田支部 昭和29年(う)139号 判決

判決理由〔抄録〕

されば被告人において運転する乗合自動車の右前輪で佐藤久美の右足を轢圧したことにつき業務上の注意義務の懈怠がなかったか否かにつき考察を加えるに本件の場合の如く右自動車進行方向に向いその右側後方より平行して進んでくる自転車を予め発見しうるか否かと云うことが問題となる。然るところ前記証人清水要三の供述によれば乗合自動車の運転手は運転台より前方は直視により注視し側方及後方はバックミラーを使用しなければならないのでバックミラーは完全に之を整備するよう留意しなければならないのであって右肉眼の視力とバックミラーの映像範囲の点から云って前方は勿論右側後方より自動車の車体と一米位接近を保ちつつ平行して進行してくる自転車の如きは直ちにバックミラーで発見できるものであって自動車の前方に出て始めて見うるに至るものでないことが極めて明らかである。而して若し右側後方より進行しくる自転車がバックミラーにうつらなかったとするならばそれはバックミラー取つけにつき業務上必要な措置をとらなかった為であり運転者たる者はその過失を前提とした事故発生につきその責を免れることはできない。またバックミラーにかかる障碍物を発見しながら漫然危険なしと速断して普通の速度で自動車の運転を開始し適宜の措置を講じなかったとしたなら前記自転車が自動車の前方でてん倒したためこれが上を乗りこえその人を傷害した結果を惹起した場合自動車運転手としての業務上注意義務の懈怠があると認むべきことは勿論であり又バックミラーに障碍物が映ったのに気づかず漫然自動車を普通の速度、普通の措置を講じつつ運転した為、前同様の事故が発生した場合も亦被告人の業務上注意義務の懈怠があったものと認めざるを得ない。然り而して本件の場合被告人には果してバックミラーの整備に関して十分な注意を払わなかったことが当審における検証の結果即ちその取つけのバックミラーでは右側後方より進行してくる自転車が十分に看取しえない状況であった事実から窺いうべく更にそのバックミラーによってもある程度事前に被害者の姿を望見しえた筈であるのにこれを発見せず一米前方に転倒されて始めて被害者を発見したことから前述の注意義務を十分果さなかったことを認めうる。

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